【資格】技術士二次試験(情報工学部門) ~二次試験受験出願まで~
IT関連の資格では少々マイナーですが、技術士(情報工学部門)の二次試験に合格しました。
ITではIPAの情報処理技術者試験が圧倒的に有名ですが、「技術士」は問題解決能力や説明能力に重きを置いた試験であり、知識的な面ではない部分の能力も試せる、と思った事が受験動機です。
情報工学部門の技術士試験に関する情報は圧倒的に少なく、私自身も苦労いたしましたので、これから受験される方の一助となればと思い、受験の記録を残しておきたいと思います。
私の受験は一次試験・二次試験共に独学での勉強となりますので、「自分はどうしたか」というレベルの情報となります。独学でも結果的には合格する事が出来ましたが、試験の性質上、他人からの添削や指導といったものを受けられるのではそれに越したことは無いと思います。
一次試験の突破
技術士は多段階の試験(一次試験⇒二次試験筆記⇒二次試験口頭)であるため、まずは一次試験の合格が必要です。私が一次試験を受けたのは平成22年であるため、現在とは異なり学歴による共通科目の免除がありましたが、現在は共通科目自体が無くなったようです。
少々、昔の情報になってしまいますが、一次試験自体は大学の理系学部を卒業されている方であれば、「基礎科目」の部分は一般教養に近い内容であるため、市販の参考書を使って勉強するだけでもそれほど難しくはないかと思います。二次試験と異なり、一次試験の基礎科目は参考書も多く出ております。*1
また、「専門科目」の試験については、情報処理技術者試験の基本情報~応用情報程度の知識があれば、それほど苦戦はしません。私も受験当時は応用情報技術者を取得しておりましたが、そのレベルであれば、技術士会のサイトで公開されている過去問を流し読みする程度で何とかなった記憶があります。
確実に勉強が必要な個所としては、「適性科目」の部分です。技術士試験は技術士法に基づいて実施されている試験であるため、法律の規定や目的、技術者倫理、最近の動向などが問われます。技術者倫理や最近の動向については、「普通に考えればわかる」物もあるのですが、技術士で無いエンジニアが、技術士法の事を普段意識する事はほぼ無いと思いますので、その点については1から勉強が必要です。これも参考書が何冊も出ていますので、1冊購入して勉強するのが良いと思います。
二次試験の出願
技術士二次試験の出願は、単に試験を受けることの申請だけでなく、
- 「受験科目選択」
- 口頭試験で使われる「専門とする事項」
- 口頭試験で使われる「業務経歴表」
という重要な事項を記載することになります。
受験科目選択
筆記試験、口頭試験ともにこの受験科目選択は重要な事項です。筆記試験では、科目によって問題が異なりますし、口頭試験では、試験官の方はこの科目と「専門とする事項」を基に試問をしてきます。
私は過去の経験から当てはまるのは「ソフトウェア工学」「情報システム・データ工学」「情報ネットワーク」の3つが考えられましたが、「業務経歴票」に記載する業務詳細の内容や過去問の確認を行った結果、「ソフトウェア工学」が最も適していると考え、選択しました。
専門とする事項
これは主に口頭試験で重要な意味を持つようです。試験官の口頭試験はこの記載を見て、どのような質問をするかを検討していると考えられます。ここの記載は自由な内容も認められていますが、詳細な記載をするよりは記載をするよりは、技術士会が提示している物から選ぶ形が無難かと思い、「科目表」の中から選択をしました。
口頭試験前に「しまった」と思ったのですが、私は受験科目に「ソフトウェア工学」を選んだにも関わらず、科目表に書かれているソフトウェア工学の一分野と情報システム・データ工学の一分野を2つ選択し、記載してしまっておりました。
・そもそも併記は許されるのか?専門であるから複数事項を記載するのはNGでは?
・「ソフトウェア工学」を選択しているのに、情報システム・データ工学の分野を併記しているのはまずいのでは?
と危惧しておりましたが、結論を申し上げると、出願時や口頭試験時にその点を突っ込まれることは特に無かったため、問題視はされていなかったのだろうと思います。
業務経歴票
受験申し込みで最も苦労するのが、「業務経歴票」の部分だと思います。口頭試験では、この部分の内容が合否を分けるといっても過言ではないといわれています。
私は2週間程度の期間で集中して書き上げることにし、毎日集中して書いては推敲し、頭を空にして読み直し、おかしい個所を書き直すといった作業を行っていました。ただ、どうしても一人で作業していると自分の前提知識や主観が入った文章になってしまうため、可能であれば、他人に見てもらう事をやったほうが良かったと思っております。
「業務内容」の箇所
経歴票にはまず、勤務先と業務内容を記載する箇所がありますが、ここの業務内容をいかに書くか、という所で非常に悩みました。私自身が心がけたところとしては、
- 簡潔過ぎず、かつ細かすぎないよう一つの業務内容は2・3行の記載に留める。また、口頭試験で業務内容を説明することになったときのことを考え、一息で言い切れる程度の文章にする。
- 情報工学での業務内容は、「開発」という用語を使いたくなるが、技術士法に書かれた技術士の定義は、「計画、研究、設計、分析、試験、評価またはこれらに関する指導の業務を行う者」であるため、出来る限り、「計画」「研究」「設計」「分析」「試験」「評価」の言葉に置き換えて記載する。
の2点でした。
「業務内容の詳細」の箇所
この部分が最も悩む箇所だと思います。書く内容が「技術士にふさわしい仕事である」という事が求められると共に、わかりやすく、簡潔に書かねばなりません。
私はとある技術開発の事を記載したのですが、文章の構成としては、
- "概要と目的"を二行。この業務の簡単な説明と目的を記載。
- "立場と役割"を一行。どのような立場で何を担当したのかを記載。
- "技術的内容"を十二行。実際に実施し、立案した内容やその過程を記載。
- "成果"を三行。業務によって得られた社会的成果を記載。
という構成で記載をしました。これも特に決まりがあるわけではないので、記載する内容によっては全く別の構成もあるのだろうと思います。「技術的内容」にもっと内容を割く必要があるのであれば、「成果」は無くても良かったかもしれません。
この中でも最も重視したのは当然「技術的内容」の部分です。記載方法に正解があるわけでもないですし、内容の性質上、合格者の方が記載した内容が公開されているわけでもないのですが、インターネット上の情報を探してみた限りでは、
- 「技術士にふさわしい」と思われるような工夫点が見られること。
- その工夫点が結論だけではなく、発想の過程がわかること。
- 「一回読んで理解できる。」ようなわかりやすさを心がけること。
- 必ずしも予算や社会的影響が大きいプロジェクトである必要は無い。
というアドバイスが多くあったため、私もそれを意識した記載を行いました。
構成としては、起承転結を明らかにするため、
- ○○が問題である。
- 従来の解決策はこれがあった。
- しかし、△△が障害でそれを採用できない。
- そこで、□□という手段を考えた。
- 結果として問題が解決できた。
というような流れでの記載をしました。
また、自分自身で心がけた部分としては、「これを読む試験官の方は、知的水準が高く、その道でも優れた能力を持っている方。しかし、自分の業務分野に精通しているとは限らない。」と前提を置いて記載をしたことです。つまり、情報工学における汎用的な用語は躊躇なく使いますし、業務の問題点もちゃんと書けば理解してくれるだろう、とある意味で決めつけつつ、自分の業務分野でのみ通用する特殊な用語は使わず、前提知識がいる部分は出来るだけ省くか平易に書く、という事です。
「業務内容の詳細」の分量がもっと多いのであれば、用語説明などをカッコ書きでいれつつ、記載するという方法も採れるのですが、如何せん、それほどの記載スペースがあるわけでもないため、より詳しい説明をしたくなる衝動を抑え、平易な記載にすることに労力を使いました。
まとめ
一次試験はマークシート形式ですし、ある程度の知識を習得できていれば突破はそれほど難しくは無いと思われますが、二次試験は出願時点から試験が始まっているといっても過言ではありません。
特に業務経歴書の部分については、受験申し込み後には一切の変更が出来ず、書いた内容で戦うしかありません。私も出願時点では、できる限りの努力をして記載内容をブラッシュアップしたつもりではありましたが、どこかで「どうせ筆記試験を通らないかもしれないから、まぁ、これで良いだろう。」と思っていた部分は否めず、筆記試験の合格通知を受け取った後に非常に焦って自分の申込書を何度も読み直しました。
そのため、二次試験の出願にあたっての最大のポイントは「必ず自分が筆記試験に合格し、口頭試験を受けるという前提で記載をすること」だと思います。この記事を読んでくださっている方は、くれぐれもその点をご留意いただければと思います。